東京高等裁判所 昭和57年(行ケ)73号 判決
原告主張の審決取消事由の存否について判断する。
右争いのない事実によると、本願商標は、別紙(一)のとおり、小判型に近いほぼ長円形の二重輪郭(外輪は太く、内輪は細い。)内の中央部に、欧文の小文字で「barba's」を矩形状にまとまるように、やや図案化して書してなるものであるが、構成する各文字が、判読し難いほどにまでその書体を特殊化していないことが認められる。
右構成に照らすと、原告がイタリー国の法人であることなどから、イタリー語の発音で「バルバス」と読まれることがあるとしても、当該文字は、我が国で親しまれた特定の語義を表示したものといい難いから、英語の普及度が高いことを考慮すれば、英語風の発音で、その欧文字部分が「バーバス」と称呼されることが少なくないものとみられる。
そうすると、本願商標からは「バーバス」の称呼を生ずるものといわなければならない。
また、成立に争いのない甲第二号証によれば、引用商標は、別紙(二)のとおり、「ハーヴアス」の片仮名文字と「HARVAS」の欧文字とを上下二段に横書にした構成であることが認められる。そして、右構成によれば、片仮名文字と欧文字との対照、また、「ヴ」の文字が初等教育に使用されていないこと、「ヴア」、「VA」は「バ」と表記され発音されることが多いことなどから、「ハーバス」の称呼をも生ずることが認められる。
そこで、本願商標より生ずる「バーバス」と引用商標より生ずる「ハーバス」との両称呼を対比すると、両者は共に、三音よりなり、語頭音において「バー」と「ハー」との差異があるほか、他の二音を同じくする。右語頭音の差について検討するに、両者は共に、長音となる広く開口する母音〔a〕を共通にし、清音と濁音との関係にある「バ」と「ハ」との相違があるに過ぎない。しかも、両者共、一般的には、特定の語義を持たない創造語として感得されるに過ぎないものである。したがつて、両者は、それぞれ一連に称呼すると、全体の語感として類似し、聴者をして彼此聴き誤るおそれがあるものといわざるをえない。
そうすると、本願商標と引用商標とは、称呼上極めて紛らわしく類似する商標といわねばならない。
なお、原告は、本願商標の外観及び観念にわたり種々主張するところがあるが、いまだ以上の判断を左右するに足りない。
そして、両商標は、同一又は類似の商品を指定商品とすることが前記認定に照らし明らかであるから、本願商標が商標法第四条第一項第一一号の規定に該当するものとした審決の判断に誤りはない。
したがつて、本件審決の違法を理由にその取消を求める原告の本訴請求は、理由がなく、棄却するほかはない。